継続は力なり アンテナは継続なり

Blogosphere

はてな初心者の自分にとっていまちょっとした感動の的になっているのが、はてなのアンテナ機能だ。これは実際に使ってみないことにはその便利さを実感することは難しい。だが、使うと良くわかる。これはもう、私みたいな怠け者のために生まれた機能だと(勝手に)思っている。アンテナについての説明は至って簡単。「インターネットで、ウェブページの更新状況を自動的に調べてくれるウェブサービスのこと」。でもこれだけではすごさは分からない。


いうまでもなく現代社会は情報過多の世界だ。インターネットの登場によって、一生涯に触れることのできる情報量は超加速度的に増加した。インターネットという、産業革命以来の地殻変動によって、私たちは炬燵でみかんを頬張りながら、空爆の下にいるイラクの少年とアメリカ北西部に住むネオコン予備軍の25歳の青年から、苦もなく、しかも同時に情報を得られるようなった。なんなら東欧の児童ポルノと北欧の人権団体のサイトを加えてもいい。とにかく世界で起こる大小様ざまなニュースが次々とアップされてくる。禿げしく便利だ。
でもときどき、自分の頭がその情報の膨大さについていけずパンクしそうになることがある。世界は情報で溢れている。だが、一個人がその双肩で担うにはあまりにも獲られる情報が多すぎる。悪事千里を走るというが、私の興味の対象もまた、インターネット上では、途方もなく拡散してしまう。そして私の脳髄は叫ぶ。

処理不能! データ多過ぎ!

知りたいものに辿り着くまでにいくつものリンクを経由し、最後には自分が何を探していたのかさえ分からなくなる、そんな経験は誰にでもあるのではないか。無数の脱線。プロパーという言葉の意味を検索していたはずが、いつの間にか英国の出会い系サイトを見ている自分。暇なときの時間つぶしならそれでも構わない。けど何かを真剣に探しているときにこれでは絶望的だ。インターネットサーフィンという言葉が一時期流行ったが、あれは歯止めがきかなくなれば歴とした病状である。誰が32歳のウェールズ出身の、出版社で働く女性の好きな食べ物など知りたいものか! Proper gravy! そんなものは糞でも喰らえである。


そんなとき私はすべてに背を向けて、あらゆる情報をシャットアウトして、6畳の狭い部屋を独り占めしている炬燵に潜り込み、頭上を飛び交う無数の情報をやり過ごしたい気分になる。情報に追いつけない。把握しきれない。その結果の思考放棄、思考停止である。そうこうしているうちにも情報は、自転を続ける世界と同じように次々と更新され、せっかくキャッチ・アップした情報はすでに過去のものとなっていく。再び気力を取り戻したとき(数日後、数週間後、数ヵ月後)、それはもはや追いつくべき現在ではなくなってしまっている。記憶も曖昧になっている。その結果、大袈裟にいえば知は一向に構築されないままだ。これはシジフォスの神話か?それとも単なるものぐさゆえか?


そんな私の前に現れたのがブログとアンテナだった。昨今ブログはその新しいコミュニケーション形態に注目が集まり考察も盛んに行われているが、眼目は、コミュニティ化したブログがもたらす情報収集の効率化という点にある。興味や関心の似たブロガー同士がトラックバックなどの機能によって結びつき、その中でも力のある書き手のブログが現在のポータルサイトのような役割を担うのではないかと予想されている。これは考えてみると必然ともいえる流れだ。つまり私のように、インターネットによる情報過多の時代に喘いでいるものが世の中にいる以上、情報収集能力に長けた信頼のおけるブロガーを、あたかもインターネット世界における堰のごとく利用することで、そこから自分に興味のある情報だけを効率よく選びとろうとする者が現れるからだ。少なくとも私は現在あるポータルサイトと並行して彼らのブログを好んで利用するだろう。
そしてこのような利用法を支えるものとしてのアンテナ機能が素晴らしいのだ。アンテナを利用することで、とりあえず私のようなインターネットオンチは自分のアンテナをキャッチ・アップすることにだけ努めればよくなる。これがやり始めてみると意外と簡単で、一度興味のあるブログを集中的に読んでしまえば、あとはアンテナが更新を告げるたびにチェックを欠かさなければよいので、日常生活にもほとんど影響が出ない。それに、不定期に更新されるサイトに較べて、更新が定期的に行われる確率が高く、また文量もある程度限られているブログはアンテナとの組み合わせが非常に良いのだ。少なくともこうして毎日すこしずつ話題を自分の身に引きつけていくやり方は私には合っていた。こういった機能はこれまでのユーザのニーズによって生まれたものなのだろうが、実にありがたいことだと思う。ブログとアンテナという組み合わせは、こうして私の日々の生活にとって欠かせないものになりつつある。